労働関係法令の知識③労働基準法の労働時間、休憩、有給について~キャリアコンサルタント量産計画

労働基準法の労働時間規定

前回の労働関係法令の知識②労働基準法の労働契約・賃金規定について~キャリアコンサルタント量産計画の続きです。

労働時間についての規定

・使用者は労働者に休憩時間を除いて1週間に40時間を超えて労働させてはいけない
・使用者は一週間の各日について休憩時間を除いて8時間を超えて労働させてはいけない
※これには例外が多数あります。実際、残業してますよね、、、

そんなホワイト企業みたことないよ!

例外①特例対象事業場については1週間の法定労働時間が44時間。
例外②法廷労働時間を超える時間外労働が認められるのは、
・災害などの避けることが出来ない理由によって必要がある場合
・労使協定により時間外労働について定めて労働基準監督署に届け出た場合
例外③変形労働時間制

特例対象事業場って何?

あんまり覚えなくていいよ
映画の制作とか病院とか飲食とか長時間の勤務が必要な仕事で
なおかつ従業員が10人未満の所のこと

残業させてる会社は例外②の労働基準監督署に届け出た場合
ってやつを使ってるの?

うん、この規定は第36条にかかれてるんだ。
だから「三六協定」って言われてるよ

三六協定使ったら残業させたい放題?

前は上限もなくてね、たくさん残業させても罰金とかなかったんだ。
でも法律が変わってね。
残業は一か月Max100時間、一年間でMax720時間までになってるよ

変形労働時間制について詳しく見ていきましょう!

変形労働時間制

変形労働時間制の種類

①1か月単位の変形労働時間制
②1年単位の変形労働時間制
③1週間単位の非定型的変形労働時間制
④フレックスタイム制

①1か月単位の変形労働時間制

労使協定または就業規則やこれに準ずるものによって定めをした場合

平均した1週間当たりの労働時間が法定労働時間を超えない範囲で、
特定の週や特定の日において法定労働時間を超えてもOK

例えば対象期間が4週間の場合、法定労働時間は40時間×4週=160時間です

4週間の間の総労働時間が160時間以内であれば、特定の日において8時間を超える労働もOK。
特定の週において40時間を超えてもOKです

OKってなに?
どっちみち三六協定結んでたら残業できるんでしょ?

ここのOKっていうのは
法定労働時間内とみなされるってこと。
だから一日8時間以上働いていても総労働時間が160時間だったら
残業代は発生しないんだ

②1年単位の変形労働時間制

労使協定により定めをした場合

対象期間(1か月以上1年以内)の間の週の労働時間の平均が40時間以内であれば、
特定の週や日において法定労働時間を超えて労働させることが出来ます。

1か月単位の変形労働時間制では就業規則に定めることで可能でしたが、
1年単位であれば労使協定による定めが必要です。

③1週間単位の非定型的変形労働時間制

労使協定により定めをした場合

1週間の各日の労働時間を比較的自由に設定できます。

一週間の労働時間が40時間を超えなければ、
最大一日に10時間まで労働させることが出来ます。

しかしこの制度を導入できるのは日ごとの業務に繁閑の差が生まれ、
事前に予測することが困難な事業(小売り、旅館、飲食店など)
常時使用する労働者が30人未満の場合のみです。

上記での時間はあくまで法定労働時間です。
例えば1週間単位の非定型的変形労働時間制を採用して、
一日10時間勤務させたとしても週で40時間を超えなければ残業代は発生しません。

④フレックスタイム制

就業規則やそれに準ずるものにより定めた場合

労働者の始業及び就業の時刻労働者の決定にゆだねることが出来ます。
労使協定により定められた清算期間(3か月以内)を平均した1週間の労働時間
法定労働時間を超えない範囲で1週間または1日において
法定労働時間を超えて労働させることが出来ます。

フレックスだったら深夜に働くのもあり?

ありっちゃあり。
でも大抵の企業はコアタイムを設けてるよ。
コアタイムってのは、この時間帯だけは絶対働いてねって時間

深夜に働くと深夜割増賃金が適応されちゃうからね

ではその流れで時間外労働や休日労働に関する規定を見ていきましょう。

時間外労働、休日労働について

使用者は労使協定を締結して労働基準監督署に届け出た場合、
労働時間を延長して休日に労働させることもできます

時間外労働や休日労働に関する労使協定は労働基準法の第36条に規定されています。
そのことから「三六協定」と呼ばれています。
三六協定の対象期間は1年間です。また労働基準監督署への届け出が効力発生の要件です。
しかし三六協定を結んだとしても限度時間があります。
1か月に45時間、1年で360時間が残業の限度です。
(※1年単位の変形労働時間制を採用している場合は1か月42時間、一年で320時間の残業が限度)

ほんと三六協定なんてなくなればいいのに、、

でも法律かわって限度時間が出来たことで
残業代がへって困った労働者もいたんだよ。
企業側としても人手不足でてんやわんや

ってか残業の一か月Max100時間、一年間でMax720時間
じゃないの?

さらに残業時間には特別条項があるんだ。
なんか結局かなり残業させられるようになってるんだよね

しかーし、臨時的な特別の事情がある場合は、
特別条項を付けることにより限度時間を超えることが出来ます。
その際には限度時間を含めて1か月100時間(休日労働も含む)
1年で720時間(休日労働は含まない)を超えてはいけません。

例外ばっかり、、、

また1年間の間で時間外労働が45時間を超える月数は6カ月までです。
連続する複数月の一か月あたりの時間外労働と休日労働の時間が
平均80時間を超えてはいけません。

残業時間が1月に80時間、2月も80時間はアウト!
1月80時間、2月60時間、3月80時間とかならセーフ!

時間外労働の上限は2020年以前までは法律による規制がありませんでした。
しかし2020年4月から労働基準法が改正され、法的拘束力を持つ上限規制が設けられました。
しかし時間外労働の上限規制は新たな技術、商品などの研究開発業務では適用除外とされています。
また建設事業、自動車の運転業務、医師についても5年間の猶予が設けられています。

時間外労働、休日労働、深夜労働の賃金について

時間外労働や休日労働、深夜の業務には通常より多くの賃金が支払われます。

割増賃金

時間外労働については25%以上
休日労働については35%以上
深夜の業務(「午後10時~午前5時」)については25%以上
割増賃金を支払わなければいけません。

ただし、時間外労働の時間が60時間を超えた分については、
50%以上の割増賃金を支払う必要があります。(※中小企業の適用は2023年4月から)

休日に残業して、その残業が深夜までかかったらどうなるの?

基本は足し算で計算するみたい。
残業の25%+休日の35%+深夜の25%
で85%の割増だね

これらの割増賃金を計算するときに基礎となる賃金には
家族手当や通勤手当などの手当は含まれません。

所定労働時間と法定労働時間、法定外休日と法定休日

また時間外労働の割増賃金は法定労働時間を超える分の労働時間に対して支払われます。
注意しなければいけないのは所定労働時間と法定労働時間は違うということです。

就業規則に10時~18時の勤務で休憩1時間であれば所定労働時間は7時間です。
もしこの条件で1時間残業をしたとしても、
法定労働時間である8時間を超えないため残業代は発生しません。


同じように休日には法定休日法定外休日があります。
法定休日とは労働基準法によって定められた最低限の基準です。
週1日(または4週に4日)のことを指します。
一方、現在4週で4日しか休日がない会社なんてすくないですよね?
完全週休2日制の会社の場合は1週間の休みのうち1日は法定休日で1日は法定外休日(会社が決めた休日)です。
しかし、どの休みが法定休日でどの休みが所定休日なのかなんて管理していません。
そのため週休2日制の場合、週2日休日出勤したら1日は休日労働の割増賃金、1日は通常賃金になります。
週1日の休日出勤であれば割増賃金を支払わないのが通常です。

なにそれ!休日ってそんなに少なくていいの!?

うん、法定休日は毎週少なくとも1回の休日か
4週間に4回の休日だけなんだ

しかし法定外休日の労働は総労働時間には算出されます。
つまり、法定外休日に出勤した時間を含めて週40時間以上の労働時間になった場合に
時間外労働による割増賃金が支払われるのです。

労働時間の管理

しかし厄介なのが事業場外での労働時間の管理です。
テレワークや外出しているときの労働時間ってなかなか正確には図れません。
そのためみなし労働時間制が使われます。

みなし労働時間制

労働時間を算定することが難しい場合に、所定労働時間分を労働したものとみなします
しかし、その業務内容が通常所定労働時間を超えて労働することが必要だとみなされる場合には、業務の遂行に必要とされる時間労働したものとみなします。

その業務について労使協定があるときは協定で定められる時間を通常必要とされる時間とします

時間で管理ができない仕事も多くあります。例えば弁護士。
その裁判にどのくらいの時間がかかるのかなんて前もって予測ができるものではありません。

労働者の裁量にゆだねられる業務は実働時間にかかわらず
労使協定によりあらかじめ定められた時間だけ労働したものとみなされます。

業務の特性上、専門業務型裁量労働制企画業務型裁量労働制に分けられます

専門業務型裁量労働制

さて、そういう業務の遂行の手段や時間配分の決定が労働者の裁量にゆだねられる業務は専門業務型裁量労働制と呼ばれます。
労使協定を締結することで導入することが出来ます。

例えば
弁護士
証券アナリスト
公認会計士
中小企業診断士
新商品の研究・開発
新聞、雑誌、テレビの取材・編集

とかです。

企画業務型裁量労働制

また企画業務型裁量労働制事業の運営の企画、立案、調査、分析をする業務です。
業務の遂行の手段及び時間配分について使用者が具体的な指示をしない業務が対象になります。
導入のための手続きは労使委員会を設置します。
委員の5分の4以上の多数決により決議して所轄労働基準監督署に届け出をします。
そして対象労働者の同意を得ることが必要です。
また実施後も6カ月ごとに所定労働基準監督署に定期報告をしなければいけません。
決議の有効期間は3年以内とすることが望ましいとされ、継続する場合は再び決議が必要です。

なんで企画業務型裁量労働制の方が申請厳しいの?

専門業務型裁量労働制は業務の性質上、
労働者の裁量に任せるしかないってわかり切ってるからね。
でも企画業務型裁量労働制ってすべての業務に対して行われるから、
明確な区別をつけづらいんだ

また導入できる事業場は
・本社・本店である事業場
・事業の運営に大きな影響を及ぼす決定が行われる事業場
・本社・本店の具体的な指示を受けることなく独自に決定を行っている事業場です。

そもそも労使委員会とは使用者と労働者を代表する人を構成員とした委員会で、
賃金、労働時間などの労働条件を審議して意見を述べることを目的としています。
委員の半分は労使協定により任期を定めたものでなければいけません。

さて、労働時間と関連して次は休憩時間についてです。

休憩時間

使用者は労働時間が6時間を超える場合は45分以上
8時間を超える場合は1時間以上の休憩を労働時間の途中に与えなければいけません。
休憩時間は原則として一斉に与えなければいけませんが、労使協定がある場合はその限りではありません。
また製造やサービス業、工事、水産など休憩時間を一斉に与えることが困難な事業については除外されています。

また使用者は休憩時間を自由に使わせなければいけません
休憩時間中に電話対応などさせた場合には、その時間は労働時間としてみなされます

労働時間、休憩、休日規定の例外

しかしこれら労働時間、休憩、休日に関する規定は一部の労働者には適用されません。

①労働基準法別表の6(林業を除く)7号に従事するもの
②監督もしくは管理の地位にあるもの、機密の事務を取り扱う物
③監視または全俗的労働に従事するもの

労働基準法別表の6(林業を除く)7号ってなに?

農業とか畜産とか。
今日は休みだからエサやらない!
労働時間過ぎたから嵐が来ても働かない!
なんてしてたら大変でしょ?

これらの労働者は法定労働時間や法定休日という概念がなくなりますので割増賃金の規定は適用されません。
良く問題になるのは「管理監督者とは誰?」ってポイントです。

居酒屋の店長が
「オレ管理者だから残業つかないんだ、、」
って悲しそうに言ってるの聞いたことある、、、

しかし!「管理監督者=管理職」ではありません。

管理監督者として認められるのは
・経営者と一体的な立場にあり、重要な職務と権限を与えられていること
・勤務時間について自由な裁量を与えられていること
・地位にふさわしい賃金が支給されていること
です。

なるほど、、、
チェーン店の飲食店店長だと微妙だね、、、

しかしこれらの労働者であっても深夜労働に対する割増賃金や次で紹介する有給休暇は対象です。

有給休暇

使用者は雇い入れから6カ月間継続勤務をして、
全労働日の8割以上出勤した労働者に対して10日間の有給休暇を与えなければいけません。

ただしこれはフルタイムの正社員の場合です。
パートタイム労働者など所定労働日数が少ない労働者にも付与されますが
所定労働日数に応じて付与される日数は異なります。

また、有給休暇の付与は勤続年数が長くなると増えていきます。最大で20日まで

https://mag.smarthr.jp/procedure/detail/yukyu_kisochishiki/

そして、2019年の労働基準法の改正により、
1年間で5日間の有給取得義務化がされました。
有給取得の義務化により使用者の時期指定義務が加わっています。

これまでは有給休暇は労働者の請求する時期に与えなければいけませんでした(時季指定権)
しかし完全に労働者の希望通りは難しいため、
使用者には業務の妨げになる場合においては時期を変更できる時季変更権がありました。

しかし有給休暇の取得がなかなか進まないため、
2019年から5日間は確実に取得させなくてはならなくなりました
でも今までと同じように労働者に時期を任せていたら、忙しくて申請しない人が多くなってしまいます。
そのため5日間だけは使用者が時期を指定することが出来るようになりました。
毎年計画を立てて有給を消化していこうねってことです。

参考:飲食店経営者必見!合法的な有給休暇義務化の抜け道をご紹介

確かになぁ
前職は有給なんて口に出すだけで恐れ多かった、、、

・飛び石連休の間の平日を休みにして一斉に休みを取らせたり
・グループごとに交代して取らせたり
・年休計画表を作成して個別に付与したり
して消化をしていきます。

しかし時期が指定できるのは5日分だけです

また、有給休暇は一日単位で取得するのが基本ですが、
労使協定によって定めた場合には時間単位で取得することも可能です。

この記事の監修者

監修者画像

キャリアコンサルタント

兵庫 直樹

国家資格キャリアコンサルタント。大手外資系ホテル勤務を経て、15年に亘り、マネジメント業務に従事。 その中で人材関連に興味を持ち、キャリアコンサルタントを取得し人材業界へ。その後、持ち前のコミュニケーション能力と資格を生かし、ハローワークにて就業支援に従事してきた異例の経歴!

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